「じゃぁやっさんご馳走様ー」


やっさんのお店を出たのは夜中2時半を回っていた。

櫂もさくらも良い具合に良いが回っていた。

「おー、気をつけて帰れよ」

やっさんも酔っ払い気味だったがしっかり割引してもらって帰路につく。


「櫂くんご馳走様」

「おぅ、どうする?始発まで満喫でも行くか?」

「ね、櫂くんの家ダメ?」

「ダメ・・・じゃねぇけど散らかってんぞ?」

「やった、じゃぁ櫂くんの家行こうよ」


自分の家に女の子が泊まるなんて考えてもんかったから部屋は散らかしっぱなし。

ましてや休みの前日、綺麗なはずがない。

それでもここまで時間を引っ張ってしまったこともあり、とりあえず家に行くことにした。

8月の頭、時計は3時手前だっていうのに蒸し暑さは引く気配もない。

いつも飲んだ帰りは一人で歩く通りも二人で歩くとまた違うものと櫂は感じていた。

ましてや、先ほど告白まがいのことをされた相手が横だとなおさらだ。

櫂の家までの道のりは静かだった。

車の通りは夜中でもある。静かだったのはさくらだった。

やっさんのお店であんなに喋っていたのが嘘かのように。

夏の星座であるさそり座が高く宙を登り

ど真ん中に聳えるアンタレスは堂々と煌めいていた。

こんな輝きを感じたことはなかったかもしれない。