「とうどーう、藤堂!」

ビクッとなって櫂が頭をあげる。

教室からは笑い声があがる。

4時まで飲んでいて朝1限目からの座学は

櫂にとって地獄との戦いだった。

それがわかっていながらも飲みにいった櫂が悪いのだが。


「また遅くまで練習?それとも飲んでたの?」

授業が終わってさくらが話しかけてくる。

「んー練習して飲んでたら4時だった」

「あーそれはしんどいね笑
 私とは一回も飲みに行ってくれないのにね」

「いや、誘われたことねーし」

「誘ったら飲んでくれんの?
 だったら誘ってみようかなー?」

「夏休みだったら大丈夫じゃん?」

「マジ?誘う誘う!」


入学から3ヶ月が過ぎ7月になっていた。

夏日を通り越して真夏日に近い日が続く。

なんとなくではあるがさくらが櫂に好意を寄せているのが

みんなわかり出していた。その事に櫂が気づいてないことにも。

近寄りがたい櫂に話しかける女子はさくらくらいしかいなかった。

さくらは頑張っている男性を見て好きになれずにはいられなかった。

ましてや毎日ノートを貸し借りし、他の人にしない話を

自分だけにしてくれうという特別感がたまらなく嬉しかった。

クラスでは多少浮いている存在であっても

その浮いた存在がいることで学校に行くモチベーションを保つことができていた。


夏休みを目前にさくらの恋が動き出す。