藤堂 櫂(とうどう かい)は床屋の息子の次男として生まれた。

厳格な父。

天真爛漫な母。

もっと厳格なじいちゃん。

気が短いばあちゃん。

なんでもできる兄。

クソ生意気な妹。


こんな家族の次男として生まれてきた櫂は

やる事に対しては全て一生懸命で生きてきた。



よく喧嘩をした翔とも

自分が中学に上がる頃には自分の立ち位置も

なんとなく把握し喧嘩も少なくなった。

なんて言ったって中学の入学式で

生徒会長の挨拶をしてるのは櫂の兄、翔だった。

翔は頭も良かった。

ミニバスから一緒の部活でも

バスケ部の部長も務めてた。

器用でイケメン、頭も良くてスポーツもできる兄

「藤堂くんのお兄ちゃんてかっこいいよね」

小・中・高・専門

全て翔と同じ道をたどった櫂は

ずっとこの言葉を聞かされてきたものだった。

生まれた時から「次」

2番目だったのだろう。

全てが2番目だった。


常に翔に劣等感を抱いてきた櫂だったが

専門学校までずっと同じ道を歩むことになる。

しかし櫂は少し路線を外した。

床屋一家で育った櫂たち兄妹たちには

他の仕事に就くことなんて考えてもいなかった。

むしろ当たり前のように両親・両祖父母と同じみちをたどった。

しかし櫂が選んだのは理容師ではなく美容師だった。

髪を切る上では何も変わりはしないが

それが櫂の精一杯の親への反抗だったのかも知れない。

そして専門学校とサロンワークを両立すること。


美容師という職業を選んだことでの出会いや別れ

櫂の運命を大きく変えていくことになる。