時間をふんだんに割いたであろう、
悪女さんの化粧が、涙でぼろぼろになってゆく。


『ごめんなさい、ですって?』


未だ変わらず笑う彼女は、
悪女さんに視線を合わせるようにしゃがみこんだ。


彼女の冷酷な笑顔を間近で見たせいか、
カチカチと歯のかち合う音がする。


何をされるんだろう。
きっとその思いで、震えているのだ。


そんな悪女さんに、
スミレはその白く細い腕をのばす。


『許してもらえると、思っているのね』


そうして、指先でそっと頬にふれる。


まさか、スミレにさわられるとは
思っていなかったのだろう。