柔らかい感触を、唇に感じた。
何が起きたのかわからずに目を瞬くと、レン王子の琥珀色の瞳がすぐ近くにあって……揺らめく炎をその中に見た。
(怒らせた? そうだよね……何を図々しいと怒るのも当たり前だよ)
「ご、ごめんなさい……私……お手当てしたらもう行きますから……え?」
どうしてか、レン王子の腕が私を押さえていて、身動きが取れない。
「あの……王子……治療をしないと」
「必要ない」
きっぱりと言い切られて、「そんなことありません!」とつい叫んでた。
「そんな酷いケガはちゃんと治療をしないと……化膿したらどうするんですか」
「……構わない」
「レン王子……っ」
もう一度、唇に柔らかい温かさを感じて。それがレン王子によるものと知った瞬間――頭に血が昇った。
「あんたは、オレの恋人だろう?」
「え……はい。おそれ多くも……偽物ですけど」
「なら……」
もう一度唇にキスをしてから、レン王子は淡々と私に告げた。
「オレを、暖めろ」