「世界は変わりません……でも、忘れないでください。あなたを失いたくない人間がいることを」

「…………」


きゅっ、と微かに両腕に力を込めた。彼に、ここに私がいるのだと知って欲しくて。


「私が言うのも図々しいのは解ってます……でも、言わせてください。私は……あなたに傷ついて欲しくないんです。これ以上傷ついて痛みを感じて欲しくない。私の勝手なわがままってのは解ってます……でもやっぱり。今まであなたは十分に傷つき苦しんできた……だから。もう傷つかないように、苦しまないように……私があなたを護りたいんです」


身分不相応な、大それたことを言ってる自覚はあった。非礼だと追い出されても仕方ない。でも、私はそれを覚悟しても伝えたかった。何があってもあなたを心配する人間がここに一人でもいるのだと。


「忘れないでください……私はいつでもあなたを想っています。そして、あなたをなくしたくないという人間がここにいるということを」

「……………」


レン王子は黙ったままな上に着ぐるみで顔を隠しているから、どんな表情をしているかはわからない。


でも。


ぼそり、と何かを呟いたから、聞こえなくて顔を寄せた瞬間――世界が反転した。