のんびりと“準備”をする先生と、ベッドで仰向けのまま天井をふわーっと見つめる私。

先生のゆったりとした雰囲気に、私はすっかり和んでいた。

けれども、どうしても拭いきれない不安がひとつ。

それは、自分の体についての若干の不安というか……。


「先生、あの……」

「うん? なんだろう?」

「あのですね、その、事前にお伝えしておきたいことがあるといいますか……」


(ちょっと!“事前”って!私っ!言い方!)


フツーの男の人なら「はあ?」ってなりそうな展開?

でも、保坂先生の包容力は半端じゃないので。


「なんだろう? 聞かせて」


(先生っ)


私が先生にすべてを委ねているようでいて、実はすべてが“私しだい”という。

何を言っても先生はすべてを受けとめてくれる。

そういう絶対的な安心感がある。

ただでも、内容が内容なので……私はやや遠慮がちに伝えた。


「えーとですね、私の体って、なんていうかその、ちょーっと頑なというか……」


(い、言いづらい……)


それでも、ちゃんと言っておいたほうがいいと思った。

先生がいつか言ってくれた、もっと自分を大切にして欲しいという言葉が、何より私にそうさせていた。


「だからその、あまり無理とかは……」


先生の反応はというと――。


「まったく、千佳さんのそういうところがたまらないんだよね」


すっかり“準備”を整えたであろう先生は、私の髪に思い切り優しいキスをしてくれた。


(先生???)


「あの、そういうところって……」


まさか、体が頑なってところじゃないとは思うけど(先生に限ってそんな……)。


「生真面目で頑張り屋なところ、でしょ?」

「頑張り屋だなんて、そんな……」

「だって、君は頑張ってちゃんと伝えてくれたでしょ、僕に」

「それは……はい」

「困ってしまうよね、本当」

「え?」

「だから、可愛すぎて困るということ」


ちょっと困ったようにはにかむ保坂先生の笑顔。

いつだって先生の笑顔は私を安心させてくれる――。


「緊張ってさ、決して悪者ではないんだろうけど、まあ曲者ではあるから」


そんなことを言いながら、保坂先生が私の体に優しくやさしく触れていく。


「緊張のせいで、挿入るものも挿入らなかったり、勃つものも勃たなくなったりするんだから。人間ってまったく繊細だよね」


淡々とした口調とは裏腹に、先生は私を愛でるように甘やかに撫でた。


「やっぱり緊張している?」

「……ちょっと、だけ?」

「そうか、寛いでくれてる気はするけど……。まあ、僕だって緊張しているわけだし」

「ええっ」

「それはそうでしょ。好きな人とこんなことしているのだから。緊張しないわけがない、よくもわるくも」