保坂先生からは「無事に実家へ着いた」という連絡をもらったけれど、それっきり……。もちろん、いつでも連絡してきていいとは言ってくれたけど。ただ、出がけに話したことについては、こちらへ戻るまで触れる気はないようだった。
「まったく、あなたたちはもう!じれったいわねえ!」
麗華先生が「くぅ~っ!」と言いながら、何とも言えない表情でくねくねと身をよじらせる。
「清水さんだって嫌いじゃないんでしょ? アキのこと」
「えっ」
そうダイレクトに聞かれると返事に困る。もちろん、嫌いなわけがない。すごく好き、大好き……だと思う。でも――。
「麗華先生も猫好きですよね?」
「はあ? いきなり何の話?」
唐突な質問に麗華先生が怪訝そうな顔をする。
(そりゃそうだよね、いきなりだもん)
「なんていうか、今の私って小狡い野良猫みたいかなって……」
私は思い切って、心に引っかかっていることを麗華先生に打ち明けた。
「野良猫って優しくかまってくれる人間に懐くし、ご飯をくれる家に居つくじゃないですか。なんか、私ってまさに――」
「バカねぇ、あなたは」
しゅんと肩を落とす私に、麗華先生は思い切り優しく微笑んだ。
「何がいけないのよ? ピンチを助けてもらったり、元気ないときに優しくされたりしたら、そりゃあ好きにもなるでしょ。自然な流れじゃない?」
「それは……」
「さっきも言ったけど、アキは前からあなたを好きだったと思う。あなただってそうよ」
「えっ」
(私がずっと保坂先生を好き、だった……?)
麗華先生の指摘に驚いて、私は思わず目を見開いた。確かに、医師として尊敬も信頼もしているし、応援もしてきたつもりだけど。でも、その気持ちが恋だったかというと――どうなんだろう?
「無自覚って罪だわねぇ」
戸惑う私を見ながら、麗華先生は楽しそうに余裕たっぷり笑みを浮かべた。
「そんなこと言われても困ります」
「私からすれば、あなたとアキって自然に惹かれ合っている感じがずっとあったけどね。頼り頼られ、求め合って、与えあって」
「でも、それって同僚としての信頼なのかなって」
「そうね。でも、人生の先輩から言わせてもらうと、男と女であるまえに人間として好きだと思えることは大切よ。そういうのが土台になって育っていく恋もあるんだから」
「まったく、あなたたちはもう!じれったいわねえ!」
麗華先生が「くぅ~っ!」と言いながら、何とも言えない表情でくねくねと身をよじらせる。
「清水さんだって嫌いじゃないんでしょ? アキのこと」
「えっ」
そうダイレクトに聞かれると返事に困る。もちろん、嫌いなわけがない。すごく好き、大好き……だと思う。でも――。
「麗華先生も猫好きですよね?」
「はあ? いきなり何の話?」
唐突な質問に麗華先生が怪訝そうな顔をする。
(そりゃそうだよね、いきなりだもん)
「なんていうか、今の私って小狡い野良猫みたいかなって……」
私は思い切って、心に引っかかっていることを麗華先生に打ち明けた。
「野良猫って優しくかまってくれる人間に懐くし、ご飯をくれる家に居つくじゃないですか。なんか、私ってまさに――」
「バカねぇ、あなたは」
しゅんと肩を落とす私に、麗華先生は思い切り優しく微笑んだ。
「何がいけないのよ? ピンチを助けてもらったり、元気ないときに優しくされたりしたら、そりゃあ好きにもなるでしょ。自然な流れじゃない?」
「それは……」
「さっきも言ったけど、アキは前からあなたを好きだったと思う。あなただってそうよ」
「えっ」
(私がずっと保坂先生を好き、だった……?)
麗華先生の指摘に驚いて、私は思わず目を見開いた。確かに、医師として尊敬も信頼もしているし、応援もしてきたつもりだけど。でも、その気持ちが恋だったかというと――どうなんだろう?
「無自覚って罪だわねぇ」
戸惑う私を見ながら、麗華先生は楽しそうに余裕たっぷり笑みを浮かべた。
「そんなこと言われても困ります」
「私からすれば、あなたとアキって自然に惹かれ合っている感じがずっとあったけどね。頼り頼られ、求め合って、与えあって」
「でも、それって同僚としての信頼なのかなって」
「そうね。でも、人生の先輩から言わせてもらうと、男と女であるまえに人間として好きだと思えることは大切よ。そういうのが土台になって育っていく恋もあるんだから」