そういえば、保坂先生とこんなふうに並んで外を歩くのは初めてだ。

麗華先生が飲みに誘ってくれても、先生はいつも来ないし。

(私、プライベートの保坂先生と一緒にいるんだ)

そう思うと、この状況がなんだかものすごいことみたいな気がして。

今さら、なんだかそわそわ緊張した。


「今日は混んでいましたか?」

「ええっ」


私ってばもう、なんでもない質問に何をびくっとしているのやら。


「はいっ、すごく混んでいて、子どもの患者さんも多くて」

「そうでしたか」

「保坂先生がいなくて大変でした」


あっ……。

言ってから「しまった!」と気づく私の愚かなこと……。

これじゃあ土曜出勤しなかった先生を責めてるみたいに聞こえたかも?

だけど――。


「そんなに大変だったのですか?」


先生は気分を害した様子はなさそうで、私はぽろりと本音をこぼした。


「すごく大変だったんです。院内の雰囲気もあまりよくなくて、本当に……」

「それは、申し訳ないことをしました」

「いえっ、そんなっっ」


そもそも保坂先生のせいじゃないのに、そんなつもりじゃなかったのにっ。

どうしよう、こまっちゃうなぁもうっっ。


「次の土曜はいつも通り出ますから」

「あのっ――」

「頑張りますよ。清水さんが楽できるように」

「へ?」


一瞬ぽかーんとしてしまった。

だって、先生が――必死に笑いをかみ殺しているようだったから。