ところで――。


「あの、先生はどうしてこんなところに……?」

「ああ、近所なんですよ、僕のうち」

「ええっ」


ってことは、先生と私ってご近所さんってことじゃない!?


「わ、私もです。私のうちもこの辺なんです」

「それは知らなかった。僕は最近越してきたばかりなんです」

「そうだったんですね」


そっか、だからスーパーやコンビニで鉢合わせすることも見かけることもなかったんだ。

まあ早速こうして遭遇したわけだけど……。


「ところで、清水さん」

「はい」

「立ち入ったことを聞くようですが、さっきのあれは――」


先生は少しだけ遠慮がちに、だけどいつもの淡々とした調子で聞いてきた。


「彼氏、ですか?」

「“元”です!!」


思わず無意識に語気が強くなった。

私ってば何をむきになってるんだろ……。


「元カレということは、つまり清水さんのうちを知っているということですよね?」

「そうなりますけど」

「そう、ですか……」


先生は何やら思案するように目を伏せた。


「先生……?」

「送らせてください。とりあえず」

「えっ」


先生の申し出はすごく嬉しくてありがたかった。

でも、これ以上面倒をかけるのは本当に申し訳なくて。


「私のうち、本当に近くなので大丈夫です。ありがとうございます」

「でも、まだその辺にうろうろしているかもしれないし」

「それは……」


そう言われると……急に怖くなった。