「大丈夫ですか?」
「えっ……あっ、はいっ、大丈夫ですっっ」
はっとして我に返ると急に恥ずかしくなって、私は先生からさっと離れた。
それにしても――
今日の保坂先生は、明らかにいつもと一味(?)違っていた。
品のいい素敵なスーツに、趣味のいいネクタイ。
眼鏡だって知的でお洒落なフレームだし。
繊細な細工が美しい腕時計も明らかに高価なものに違いない。
しかも、それがまたよく似合っていて、とてもしっくりきていたものだから。
こんなところで出会えた偶然だけでなく、いろんな驚きが重なって、なんだか不思議な気持ちだった。
「ありがとうございましたっ。本当に、本当に助かりました」
「いや、何もなくてよかった」
その口調はいつもの淡々とした保坂先生そのものだった。
なんていうか、外見こそバージョン違い?だけど、中身は紛れもなく保坂先生という。
“私が知ってるいつもの保坂先生”は、私の心をほっこり和ませ、とても安心させてくれた。