とりあえず、一切連絡をとりたくなかったので、昨夜の時点ですべて受信拒否にしていた。

でも――。


「それでさらっと引いてくれるといいけど。ちょっと心配だわね」

「はい、本当に……」


麗華先生の言うとおり、このままで終わらず何か面倒なことになったらと思うと……。

実をいうと、今日はスマホを充電したまま自宅に置き忘れてしまっていて。

帰ってからそれを見るのが怖かった。

好きだった人をあまり悪くは言いたくないけど、彼は粘着質なところがあったから。

それこそ、自分に都合の悪いことはまるでなかったことのように忘れるくせに。


「まあ、案外ただの気まぐれかもしれないし。ほら、酔っぱらって昔の女に電話しちゃったみたいな?」


「そうですね」


先生はからりと笑い、私も微笑みながら頷いた。

でも、お互いになんとなく理解していた。

ただの気まぐれかもしれないという見込みは、おそらく気休めでしかないことを。


「困ったことがあったらすぐ相談しなさい」

「はい」

「何かあってもなくても、いつでも話聞くから。ね?」

「はい。ありがとうございます」


私のことを本気で心配してくれる麗華先生の気持ちが嬉しかった。

いろんなことがあるけれど、こんなふうに自分のことを見ていてくれて思いやってくれる人がいれば頑張れる。

先生の心強い言葉に、今日一日の頑張りが報われた気がした。