それにしても――桑野先生じゃないけど、私も今日は本当に疲れた。

1日を通して患者さんの波が途切れることがなく、午前中はとくに子どもの患者さんが多くて、桑野先生が対応に手間取って、てんやわんやという感じだった。

それに――まったく個人的なことだけど、私には昨夜からちょっと気がかりなことがあって寝不足で、いまいち調子を出せずにいた。

こんな日は、保坂先生がいてくれたらいいのに。

本音を言ってしまうとそうだった。

先生がいてくれたら――。

子どもの患者さんもあまり辛い思いをせずにすむのに。

高齢の患者さんもわかりやすい説明が受けられるのに。

私だって仕事がしやすいし、それに――きっと元気が出るのに。

もちろん「保坂先生がいないとやる気出なーい」なんて我がままはナシだけど(許されるわけないし)。

そしてようやくの終業時間。

すぐに帰って休みたい気持ちもあったけど、私は適当な作業を見つけて残っていた。

すると――。


「ごめんね、清水さん。お待たせしちゃって」

「いえ、大丈夫です」


他のスタッフ全員があがって程なくして、帰り支度を済ませた麗華先生がやって来た。


「じゃ、行きましょうか」

「はい」


わざわざ居残りしていたのは、麗華先生を待っていたから。

ときどき、麗華先生は慰労をかねて私たちスタッフをご飯や飲みに誘ってくれる。

みんなで行きましょう!と全員を誘うときもあるけれど、今日は私ひとりだけ。

ちょうど昼休憩の終わりくらいに、こっそり声をかけられて約束していたのだ。