桑野先生が帰るとすぐ、入れ替わりで貴志先生がやってきた。
すると今度は――。
「聞いてくださいよー、貴志先生!桑野先生ったらね――」
「福山さんずるーい!私だって貴志先生に話聞いて欲しいのにぃ」
愚痴への愚痴が一斉に始まる。
貴志先生、あたりはソフトだから。
「まあまあ、皆の話を聞いてあげるから。はい、これは差し入れ」
「キャーッ!これって今話題のあのお店のマカロンじゃないですか!?」
「嬉しいぃ~!いつもごちそうさまです♪」
さらに、貴志先生は女子が喜ぶツボというのを十分に心得ている。
話を聞いてあげるときは、それこそ「うんうん」と聞くだけで余計なアドバイスなどしないし。
差し入れはいつだって、お洒落で可愛いスイーツだし。
貴志先生は桑野先生のようにスタッフのまえで愚痴を言ったりは決してしない。
でも――私はちょっと苦手かも、貴志先生。
たとえ愚痴っぽくても桑野先生のほうがまだ心を許せる気がする。
貴志先生はいつも愛想がいいし、印象としては温厚で社交的な人だと思う。
けど、私はどうもモヤモヤしてしまうのだ。
例えば先日も、年配の患者さんが微熱と喉の痛みで受診されたとき――。
「昨日から調子が悪くて。たぶん風邪だとは思うんですけど……」
「はいはい、それを決めるのはボクですから。診察しますねー」
顔はニコニコ笑顔だし、口調だって柔らかい。
でも、だからって――こういう対応ってどうなんだろう?
ソフトな印象なようでいて、実は患者さんに対して失礼な物言いをしているときがある。
貴志先生は、あしらい上手なのだろう。
スタッフに対してもそうだ。
聞き上手なのは事実だけど、実際はスルー上手なのだと思う。
貴志先生には、言葉の端々に「ボクとキミたちとは違うから」という意識が感じられる。
まるでドクターを頂点とする序列のてっぺんから下々の者を見下ろしているような。
だから、私は貴志先生とできるだけ距離を置くようにしているのだけど、他の皆がどう思っているかはわからない。
ただ、福山さんには気の毒だけど、貴志先生が私たちスタッフの中から結婚相手を選ぶようなことは決してないだろうなと私は思う。
すると今度は――。
「聞いてくださいよー、貴志先生!桑野先生ったらね――」
「福山さんずるーい!私だって貴志先生に話聞いて欲しいのにぃ」
愚痴への愚痴が一斉に始まる。
貴志先生、あたりはソフトだから。
「まあまあ、皆の話を聞いてあげるから。はい、これは差し入れ」
「キャーッ!これって今話題のあのお店のマカロンじゃないですか!?」
「嬉しいぃ~!いつもごちそうさまです♪」
さらに、貴志先生は女子が喜ぶツボというのを十分に心得ている。
話を聞いてあげるときは、それこそ「うんうん」と聞くだけで余計なアドバイスなどしないし。
差し入れはいつだって、お洒落で可愛いスイーツだし。
貴志先生は桑野先生のようにスタッフのまえで愚痴を言ったりは決してしない。
でも――私はちょっと苦手かも、貴志先生。
たとえ愚痴っぽくても桑野先生のほうがまだ心を許せる気がする。
貴志先生はいつも愛想がいいし、印象としては温厚で社交的な人だと思う。
けど、私はどうもモヤモヤしてしまうのだ。
例えば先日も、年配の患者さんが微熱と喉の痛みで受診されたとき――。
「昨日から調子が悪くて。たぶん風邪だとは思うんですけど……」
「はいはい、それを決めるのはボクですから。診察しますねー」
顔はニコニコ笑顔だし、口調だって柔らかい。
でも、だからって――こういう対応ってどうなんだろう?
ソフトな印象なようでいて、実は患者さんに対して失礼な物言いをしているときがある。
貴志先生は、あしらい上手なのだろう。
スタッフに対してもそうだ。
聞き上手なのは事実だけど、実際はスルー上手なのだと思う。
貴志先生には、言葉の端々に「ボクとキミたちとは違うから」という意識が感じられる。
まるでドクターを頂点とする序列のてっぺんから下々の者を見下ろしているような。
だから、私は貴志先生とできるだけ距離を置くようにしているのだけど、他の皆がどう思っているかはわからない。
ただ、福山さんには気の毒だけど、貴志先生が私たちスタッフの中から結婚相手を選ぶようなことは決してないだろうなと私は思う。