「普通に楽しかったよ!」



「そっか、良かったね!」



香に海の事を話した。



あたしはその頃から段々、駿くんの気持ちは無くなっていった。




駿くんが他の女の子と絡んでいても



もう何も思わない。



むしろあたしは、どうぞ勝手にしてくださいって感じ。



あたしは今が楽しいと思ったから。



前に進もうって思ったから。



海の日以降、速水くんとは



司くんみたいに学校で気まずくなることも、



目を合わせなくなることも無かった。



正直あたしは不安だったけども。



学校で気まずくなっちゃうんじゃないかって。



だけどその心配はなかった。



司くんとは、相変わらず話をすることもなかった。



後ろも向かないし、あたしも話しかけない。



あたし達に見えない壁ができたみたいで



あたしは後ろの席の速水くん寄りに机を並べた。



速水くんとは授業中も休み時間もいつでも話せるような環境だった。



3学期の最後らへんの授業はそりゃあもう、適当で。



皆が遊んでいた。



「司とはあれから話したりした?」



「ううん、あっちがあたしを避けてるみたい」



「それはねーよ」



速水くんは髪の毛を少し整えて言った。



「そうかな、」



失いたくは無かったな。



友達のままが良かったもん。



「大丈夫って」



速水くんのワックスで整った髪の毛はいい感じで



前髪も軽く靡かせている。



「速水くん...焼けたね」



「かなり」



「めっちゃ黒いじゃん」



「 そげんねーよ」



「ふーん。まだまだ今から焼けるね」



「やばいね、日焼け止め塗らないと」



速水くんは冗談で笑った。



「速水くんは何者なんですか」



「は?」



突然訳の分からないことを聞かれてポカンと口が空いている。



かわいい。



「何者なの」



「んー...俺者?」



「ぷっ、」



俺者って。



なんだか不思議な気持ちだった。



速水くんともっともっと一緒にいたいと思ったのは



きっとあたしの気のせい。