いったい何処へ行くつもりなんだろう。

不服に思いながらも、流れていく窓の外の景色に視線を向けていると、暫くしてある駐車場へと車を滑り込ませようやく停車した。

そして彼はサングラスを掛け、無言のまま颯爽と歩き始める。



「待ってよ」



行くなら行くって、なんか言いなさないよ。
慌てて車から降り、私は小走りで彼の後を追いかける。

後ろを一度も振り返ることなく、ズンズン先に進んでいく侑李。足の長さの違いが恨めしい。

その彼が入って行ったのは、有名ブランドのブティック。
今までの私には、縁遠い場所のひとつだ。
こんなところに来て、新しい洋服でも買うんだろうか。

そんなことを思っていると、彼が一人の女性店員に声を掛けていた。



「こいつに、いくつか見繕ってくれる?」

「畏まりました」



彼女は丁寧にお辞儀をし、私に近づいてくる。
一方侑李はと言うと、店内を物色する訳でもなく
興味無さそうに店の中央に置かれたソファに座り、長い脚を投げ出していた。