今にも溢れそうな涙を侑李が親指で拭う。

お姉さんや弟さんとは、年に一度程度だけど連絡を取り合うこともあるらしく、特に二番目のお姉さんは頻繁に連絡がくるのだとか。

侑李の性格上、殆どがお姉さんからの一方的な連絡で、普段は櫻井さんが対応するらしいけれど、今回は侑李自らお姉さんに連絡をとり私の為の指輪を頼んだという。


お姉さんは、初めて侑李から頼られたと凄く嬉しそうに燥ぎ、あの日も表情が柔らかくなったなどと終始楽しそうに雑談をしながら、自分の店に連れていったらしい。



「あのお店って、お姉さんの?」

「そう。お前が尾行していたのも気が付いてた。あの店、ガラス張りだろ?カウンターの鏡にうつ映り込んでたし、それに櫻井からもお前が後を追ったって聞いてたからな」



侑李がお店で振り返った時、バレてないと思っていたけれど、随分前から気が付いてたんだ。



「そうならそうと、もっと早くに教えてくれたら良かったのに」



教えてくれてたら、こんなにも侑李を諦めなきゃって思わなくて済んだのはずだ。
二股だとか、裏切られたとか、侑李のことを恨みそうになっていた。



「そうしようと思ったんだけどな。姉貴のことを話すって事は、家族の事も話さないといけないし」