「あの日、俺は姉貴と会う約束をしてたんだ。コレを作るためにな」



そういって抱きしめる力を緩め体を離すと、ポケットからベルベット調の小箱を取り出した。
それを私の目の前で開き、キラキラと輝くプラチナ指輪を見せる。



「それって……」

「こんな形で、お前に見せるはずじゃなかったんだけど」



私のために作ってくれてたってこと?

指輪に触れようと、小箱に近づけた瞬間パコンと小気味いい音を立てて閉じられた。
突然閉じられたことに驚き、首を傾げ彼を見上げる。



「これを受け取るのは、少し待って欲しい。俺の話を聞いてくれないか?」



侑李は少し哀し気な笑みを浮かべると、膝を立て立ち上がった。
そして私に手を差し伸べ、ソファへ誘う。



「少し話が長くなるかもしれないが、聞いてくれるか?」



三人掛けのソファに隣り合って座り向かい合うと、侑李は自分が来ていたジャケットを脱ぎ、私の肩に掛けた。



「俺には、二人の姉と年の離れた弟が一人いるんだ」