そこまで振り返って目を開ける。
そして窓に歩み寄り、コツンと額を預けた。
窓ガラスの硬く冷たい感触が、私を冷静にしてくれる。



「侑李には、別に想う人がいた――」



改めて口に出して、現実味を増す。
空を見上げると、さっきまで晴れていたのに今はどんよりと、黒く分厚い雲を連れて来て広がっていた。

私の代わりに空が泣いてくれようとしているのかもしれない。



「誰に想う人がいるって?」



ここに居るはずのない人の声が背後から聞こえ、ハッとする。
視線を戻し、窓に映り込む人の姿を見て胸に熱いものが込み上げてきた。



「どうして……」

「恋人の見舞いに来ちゃいけなかったか?」



機嫌悪そうに答える侑李。
普段ならきっと「そんな事ない。来てくれて嬉しい」って素直に喜んだと思う。

けれど今はそれを素直に喜べる私じゃない。