「いまいく!!」


叫び返した私は、カバンを持って階段をどたどたと駆け下りていく。



靴下ごしに伝わる、木の感触。


きらい。


私はこの家が嫌い。



パパもママも優しい。


でも私、それ以外のみんなから嫌われてる。


「ダメな子」「失敗作」「笠木家にふさわしくない」


たくさん理不尽な事言われて生きてきた。



でもね、守ってくれた。


いつきだけは、私の味方ーー。



召使いが開ける前に、すぱーんと玄関の引き戸を乱暴に開けた。


仕事奪っちゃったけど、仕方ない。


ぜえ…はあ…


私は息を切らしていつきを見つめた。


「おせえ。」


いつきは私のおでこをぴんって指ではじいた。


「いたっ」


遅刻すると必ずやられる。


いつかおでこに穴が空いちゃうんじゃないかな。