~誤解 花子side~




ガラガラララッ

しんとしたこの空間に水を差すように ドアが開いた。それは一瞬で図書室にいる全員の注目を集めた。

来た。あの3人だ。

「ここ図書室なんだからもうちょっと静かにしなよ笑」
早見。自分が1番うるさいということに気づいてほしい。

「ごめんごめん。てゆーか図書室に用なんてあるの?」
野村 ユウ(のむら ユウ)。もう少し声をおさえたらどうだろうか…。

「ユウちゃん。まだ大きいよ。」
倉科 紀夏(くらしな きなつ)。この中ではおとなしい方だが、男子に対する礼儀がない。

「あっ」と、野村は口をおさえた。
それでも声のボリュームは段々元に戻る。私は苛立ちをおぼえた。

早見たちのせいでわざわざ教室から遠い図書室まで移動してきたのだ。

なぜ、その元となる彼女らと同じところで勉強をしなければならないのか。まるで意味がない…。

沢野辺高校 通称「沢高」の図書室は広い。そのため、勉強から趣味まで 幅広いジャンルが楽しめる。

3人は何やら雑誌系統の本棚の前ではしゃいでいる。

「ユウちゃんこれ似合うよね」「こっちの方がいいって」「今度ここ行こうよ」「あ、これ好き!」どうでもいい。実にどうでもいい。イライラは怒りに変わり、沸騰寸前だ。

雑誌の山を持った早見がこちらへ来る。

ドンッ

私の後ろを通り過ぎようとしたとき、私の肩にぶつかった。
「あっごめん!ごめんね、やま、やま…山里さん!」

山田だ山田。山田花子。こんなありがちな名前でさえ覚えていないなんて。

「平気です。」
素っ気ない返し方だと自分でも思ったが、相手は気にしないだろう。

その後も 小さな笑い声が広い図書室でこだまするように響き合い、勉強どころではないので教室に戻った。