:出席番号1 ~誤解 花子side~:


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部屋中に幸せな時間を妨げる音が鳴り響く。その不快音は、いつも決まった時間に睡眠の終わりを告げる。毎朝ご苦労様とでも言ってやるべきか。
カーテンから伸びた明るい光の筋が、床に反射し私の目を刺激させる。春の朝ほど気持ちの良いものはない。

制服に着替え、朝食を済ませ、身だしなみを整える。
あ…忘れ物。朝置いたままだった。自室の棚の上にある 祖父からもらった腕時計。私が高校に入学する際にくれた物だ。今や形見となっている腕時計は、細かい細工がされていて、ちょっと古い。私の好みに合っているので毎日つけるようにしている。

自室を出て、目の前にある扉を軽く叩いた。
「太郎、朝だから起きて」
…相変わらず弟からの返答は、ない。
最近は声も聞いていない。そろそろ安否を確認したいところだ。昔は仲が良かったのだが。私は弟の部屋を後にした。

リボンは一番きつく、第一ボタンは閉め、スカート丈は膝下、白い靴下、髪は肩上、枝毛なし、腕時計も、よし。
何度目かの細かい身だしなみのチェックをしてから玄関の鍵を閉めた。