「美味しいね~」


クレープ屋の小さな看板が見えた頃。


少し先から麻美の声が聞こえた。


友達と食べに来てるんだろうな。


俺はそう思ってたんだ。


でも。


「あ!“翔”口にクリームついてるよ?」


麻美ははっきり“翔”と言ったんだ。


“翔”って、あの翔だよな?


翔と来てんのか?


2人で?



俺が、クレープ屋を通り過ぎようとした時、見てしまった。


麻美と翔が、笑い合いながら抱きしめあっているところを。


その時心臓が止まったかと思った。


これって、“浮気”だよな?


2人は隠れて付き合ってる・・・?


俺がいるのに?


麻美は、俺じゃなくて翔のことが好きなのか?


俺は、スーパーまで走った。


さっきの光景を・・・俺のこの気持ちを振り払うように。