サキさんは、黙っていると怖そうだけど、
話すと子どもみたいで、笑うともっと子どもみたいで、
とても女性に人気がある。

いつも、甘さと苦さの混ざった匂いがして、
私はその複雑な匂いが好きだったけれど、
サキさんは「リクは良い匂いだ。」と言って
よく後ろから私の首筋に鼻を寄せてきた。

私はいつも、警戒した。
これでもし私がサキさんを好きになんてなったら、
何というか、思う壺だ。
誰の思う壺かなんてわからないけれど、
私の中でそれはルール違反だった。

首筋から気配を感じる度に、そのことを思った。

「いらっしゃいませ。」

扉の開く音がして、声を掛ける。
そこには、よくお店に来てくれるユリナさんがいた。

「サキ、いますか?」
「あ、はい。奥に。」

そう言ったときには奥からサキさんが顔を出していた。

「ユリナー、お前また来たの?」
「来てあげたよー!」

私はそれとなくその場を離れて、
商品を整える。

サキさんはやっぱり、とても女性に人気がある。