うぅ……っ、いつも依ちゃんが壁になってくれてたからわからなかったけど、周りは男の人が多くてちょっと怖い……。
胸の前で鞄を抱いて満員電車に耐える。
電車が急に揺れてバランスを崩しそうになる。
よろけた私の手首を誰かが掴んだ。
「大丈夫?」
誰……?
男の人の声がして恐るおそる顔をあげる。
そこには、
「春野……君?」
どうして春野君がここに?
びっくりして目をぱちくりさせていると、春野君が手を引っ張って出入口付近まで私を連れてきてくれた。
自分が壁になるようにドアに手をついて。
「ごめん。ちょっと窮屈かもしれないけど我慢して」
も、もしかして私が潰れないようにしてくれてる……?
目の前にいる春野君がまだ信じられなくて、だけど私の胸はトクトクと音をたてている。