「ばっ馬鹿にしないで下さいまし!誰だって不安になったらお母さまを呼ぶものですわ!」

甲高いというより幼い声が響く

「はぁ?お前馬鹿じゃねーの。ふつーさぁここに連れてきた奴を警戒して、まずは静かにするだろ。それをお前は起きて早々わんわん泣く。うるせえんだよ!」

まぁでも誰も来なかったし、こうやって安心できたのもあの子が泣いてくれたからだし…
そんなに怒ることもないんじゃ…

「お前ではないですわ!アリス様とおよびなさい!」

うん。様呼びさせる人初めて見たよ…

「はぁ?何様だよお前!」

「まあまあまあ。こんな状況で喧嘩しても。」

私はとりあえず仲裁に入った。
が、喧嘩は止まらない。

「今言ったことを後悔するのね!いいわ教えてあげる!私は日本屈指の財閥。富永家の令嬢、富永アリスですわ!どう?驚いたでしょ!これからは無礼な口を叩かないようにしなさいまし!」

「はぁー?知らねえよそんな三流財閥!だいたいその中途半端なお嬢様言葉やめろ!馬鹿っぽいぞ。」

うわぁ。男の子も口が達者。
これはアリスちゃん顔真っ赤にしてそう。

「さ…三流ですって?!貴方のことお父さまに言いつけてやるわ!」

「へーへー、じゃあせいぜいそのお父さまに会えるようにするんだな、もうここから帰れねーかもしれないけ…」

あ…

「うぁぁあん!」

今の一言はまたアリスちゃんの不安を煽ってしまった。

いや、私たち全員。
その事を改めて実感した。

「2人とも、大丈夫だよ!だから今は」

「うっ…ぐすっ…」

今度は男の子も嗚咽を漏らし始め、私はどうしたらいいかわからず、あたふたするだけ。

「いい加減にして下さい。」

今まで黙っていた青年の声が響き、2人はヒッと泣き止んだ。

「喧嘩してても混乱するだけです。今はこの状況が変わるまで、ここまでの経緯を話してこれからのことを考えましょう。どうやら今は夜のようです。窓がありましたので朝になれば明るくなります。それと、雲がかかって星は見えなかったです。今週一週間の天気で曇の予定だったのは12日だけなので、どうやら連れてこられて目が覚めるまで、一日ほどしかたっていないようですよ?」

「はいっ!私も調べた結果、この部屋の鍵は指紋認証だったよ。どうやら、結構ハイテクな施設かもです。それからこの部屋、床に変な溝があちこちにあるみたい。」

私が2人の喧嘩に付き合ってるうちに残りの2人はしっかり調査済ませてた。凄い。私もしっかりしなきゃ…

「とりあえず、自己紹介でもしましょう。」

青年の声が響いた。