図書室に入るとなんだか違和感を感じた。
いつもよりどんよりしている気がする。
しかも人が誰もいない。図書室にはいつも受付に図書委員がいるはずなのに今日はなぜかいないのだ。トイレにでも行ったのだろうか。
まあ、気にしないでおこう。
さてさて、今日は何の本を読もうか。
いままで読んだ本を思い出しながら、いつも座っている席に行くと、そこには一冊の本が置いてあった。
見たことない本だ。その本は分厚く、なんだか嫌なオーラを発している気がした。
読んではいけないような、触ってはいけないような、そんな気がした。
居心地が悪くなり思わずその場から立ち去った。なんだったのだろう。
でも、今度はなんだかあの本の中身が気になった。あんなオーラを発する本なのだ。なにかとてつもなくすごいことが書いてあるのかもしれない。考えはじめると止まらなくなった。
ちょっとだけ読んでみよう!
好奇心には勝てないらしく、もう1度図書室に引き返すことにした。
図書室に入るとまたあのどんよりとした空気に包まれて息が苦しくなった。
本の前に立つと、これでもかというほど緊張した。心臓の音がやけに大きく聞こえる。震える手で本を持ち上げるとズッシリとした重さが伝わった。
すこしホコリのかぶったその本は、紙の色が茶色くなりかけていて、古臭かった。
表紙には英語が書いてあった。
汚れていて一部しか見えない。最初の方の字はなんとか見ることが出来た。

「Do not open this book」
「It would have been drawn into this book」

私は英語が苦手だ。
なんて読むのか、なんという意味なのかさっぱりわからなかった。
後でまた調べればいい。この時そう思った。

息を整えてから、本に手をかけて、ゆっくりと開いた。

まぶ…し、い。

ここで私の意識は途切れた。



後にわかったのだが、
あの英語の意味は

「この本を開いてはいけない」
「この本の中に引き込まれてしまう」