キーンコーンカーンコーン
「ぎりぎりセーフっ!」
あと少しのところで間に合った。これもいつも通りだ。
教室に入ると、
「まおー!お決まりの登場おつかれさまー。今日もばっちりボサボサヘアが決まってるね!」
友達の朝日が話しかけてきた。
皮肉が混じってるけどそこは心の広い私だ。ゆるしてやろう。
「おはよー。あさひー。てかさ、注意してあげようとかそういうことは思わないわけ?」
「いつもこの調子だと流石に注意する気も失せるってもんね。もう当たり前の光景になりつつあるからね。」
もう遅れてくることが当たり前になったか。朝日の言っていることが私にも理解出来てしまうので、反応に困り、そうだねと適当に流しておいた。

1時間目と2時間目も終わり10分の短い休み時間になった。
「まおはさ、恋とかしなくてもいいわけ?」
朝日がイスに座ったままぐるっと回って背もたれに肘をつきながら後ろにいた私に質問してきた。
いきなりなんだ?
たまに朝日は変なことを聞いてくる。
「ついこの間まで恋してたじゃんか。」
一応付き合ってた人は何人かいる。
「まおのこの間っていつのことを指してんの?あんたが誰かと付き合ってたのなんて半年も前のことじゃん。」
そんな前のことだっけ?
時間の流れは早いものだ。私的にはつい最近のことのように感じられた。
私が付き合ってたのはサッカー部の部長、年下、生徒会長というなんかとってもレベルの高そうな、やばそうな人たちだった。だがその誰もがピンと来ないような人ばかりで長くは続かず、半年もたたずに別れてしまっていた。
「まおはさ、ちゃんと自分の好きな人を見つけなきゃだよ。」
そんな事言ったって、本気で好きな人なんて見つからないもんなんだから仕方がない。
「うん。」
「私はどんなときでもまおに協力するからね。」
私の肩に手を置くとまおは可愛いんだからと励ましながらポンポンと軽く叩いてきた。
私、別に恋人いないからって落ち込んでるわけじゃないよね!?
あー、そうか。朝日には最近彼氏ができた。だから私を気遣ってくれているのかもしれない。
今日は朝日がいつもよりずっと優しい。根は優しいんだな。いつもはきつい言葉しか言わない人だからこんなことは滅多にない。
「どうしたの?急に」
「わっかんない!ガラじゃない事言っちゃった」
朝日はそう言ってにっこり笑った。
心配してくれてるのかな?
朝日にはいままでたくさん迷惑かけてきた。恋愛相談によくのってもらったりもした。そういえば、感謝の言葉をずっと伝えていない気がする。
「朝日」
「なに?」
「いつもありがとう」
「どうしたの急に」
「今伝えなきゃいけない気がして」
「変なの」
「いいの」
「こちらこそありがとう」
「うん」

恋か。
本気の恋ってやつを
やってみたかったりして

いつかできるだろうか
本気で守りたくて
本気で一緒にいたくて
本気で愛しい人が

そんな本気の恋が