私はルリコさんに話を聞こうとルリコさんの部屋を訪れていた。
快く出迎えてくれたルリコさんにイスに座るように促され、近くにあったイスに腰掛けた。
「よく来てくれたわね。まおさん。」
「はい。お話を伺いたくて。」
やっとルリコさんと話ができる。焦る気持ちを抑え、説明をはじめた。
「私はルリコさんと同じなんです。」
「え?」
「私も本の中に迷い込んだんです。図書室で。」
ルリコさんの瞳が大きく揺れた。
驚きを隠せないといった様子で私を見つめていたルリコさんは、やがてゆっくりと口を開いた。
「私以外にもいたのね。」
「帰る方法があったりしますか?」
縋るような気持ちでルリコさんに視線を向けた。
「私は、帰るチャンスを自分で逃したのよ。」
「どういう、こと、ですか?」
「ここに来てから2年後くらいかしら。私の目の前にまたあの本が現れたのよ。でも私はその時、すでにこの世界の人と恋に落ちていた。だから、帰らないことにしたの。この世界で愛する人とずっと暮らし続けると決意したの。」
「後悔はしてないんですか?」
「私は子宝にも恵まれてこの世界で幸せを掴んだわ。少しも後悔なんてしていない。」
すごかった。私は家族や友達を捨てる覚悟が出来るだろうか。一生会えなくなってもいいと思えるだろうか。それほどまでにオルトンを愛していたのか。私にはルリコさんが輝いて見えた。
「私にも帰れるチャンスは来るでしょうか。」
「それは私にもわからないわ。でも何か困った事があったら相談してね。」
「はい。」
ルリコさんと話して希望が見えた。
帰れるかもしれない。
可能性は0ではないのだ。