アルは近くにあったイスに座ると、膝の上で拳を握りしめながら話し出した。
「隣の国の王女だったエドウィーナは、父と婚約をさせられたんだ。お互いがまだあった事も無くて、最初はどっちも反対していたんだそうだ。だけど、その後の面談でエドウィーナは父に一目惚れしたそうだ。...」
アルの話によると、
一目惚れをしたエドウィーナは婚約を快く受け入れた。だが、オルトンはその時好きな人がいた。それがアルの母であるルリコだった。ルリコと出会い、恋に落ちていたオルトンは婚約を断固拒否した。だけどその時は一般人と王族が結婚などありえないことだったので、婚約は破棄されず、周りの人たちによって順調に進んでいった。エドウィーナは結婚を楽しみにして、一緒に住む時の家具も買っていて、すっかりオルトンと結婚できるとばかり思っていたのに、オルトンはそれを嫌だと断り続け、挙句の果てにはルリコを連れて遠くの街まで逃げたのだ。それを見た家臣たちはオルトンが本気だと分かり、ルリコとの結婚を許した。これでエドウィーナとの婚約はなかったことにされ、オルトンに恋をしていたエドウィーナは、失恋をしてしまった。三日三晩泣き続け、もう1度婚約をと頼み続けたそうだ。だが、エドウィーナもそのうち大人しくなり、違う王族の人と結婚をしたので、これで大丈夫だとその時はみんなが安心した。それから約20年間なにもなかったのに、エドウィーナがいきなりルリコを誘拐すると、コイツを返りして欲しければ娘のジョアンナ・ポラードとオルトンの息子どちらかを結婚させろと言ってきたのだ。オルトンの息子はアルの他に弟のハルがいた。エドウィーナは自分がオルトンと結婚できなかったのでジョアンナにオルトンの息子たちと結婚させて関係を持とうと思ったのだろう。それにキャトリー兄弟はどちらも美形でジョアンナも結婚したいと言っていたそうなのだ。でも、ハルには好きな人がすでにいて、絶対に結婚なんてしないと言い張ったので、アルが結婚せざるをえなくなった。アルにはまだ好きな人や決まった人もいなかった。でもアルはこんな結婚の仕方は嫌だし、ジョアンナの事が好きじゃないので、結婚なんてしたくない。でも結婚しなければ母が帰ってこない。そんな窮地に追いやられている状況だった。