アルは最後まで黙って聞いてくれた。
話し終えると少し驚いた顔をしながら私をじっと見つめていた。
「やっぱり信じてもらえないよね。」
落胆しながら、下を向くと、グイッと顎をもたれ顔を上に向かせられた。
「っ!!」
顔がカッと赤くなった。
そんな事には気づかないアルは、
「あー、やっぱり、そういえば似てるな。」
確信したようにひとりうなづいていた。一体なにが似ているのだろうか。
首を傾げた私を見て、
「母によく似ているのだ。」
そうアルは言った。
アルのお母さんに?私が似てる?
どういう意味で言ったのかいまいちよく分からなかった。
アルは話をよく飲み込めていない私に、もう1度はっきりと言った。
「だから、母も本の中に入ったと言っていたのだ。それに、容姿もよく見れば似ている。」
それを聞いた私はポカーンとした。
仲間がいた、それだけで嬉しかった。安心した。気が緩んだのか、その場にヘナヘナと座り込んでしまった。
「ほんとに?」
背の高いアルを見あげながら聞くとアルは、こんな嘘をつくとでも思ってるのか?とでも言いたげに、うん。とうなづいた。
「その、アルのお母様はどこにいるの?」
はやく話を聞きたかった。あなたはここに来た時どうしたのか。どうしたら戻れるのか。聞きたいことが山ほどあった。
「母はここにはいない。」
苦しげな声でアルはつぶやいた。
あっ!もう元の世界に戻っているのだろうか。それなら、私はなんて無神経なことを聞いてしまったのだろう。いまさらになって後悔の波が押し寄せた。
「ごめん、聞かれたくなかったよね。」
「いや、違うんだ」
アルは慌てて説明をはじめた。
「元の世界に戻ったとかそういうわけではない。ただ...。」
またアルは唇を噛みしめて苦しそうな顔をした。
「さらわれたんだ。あいつに。」
えっっ
驚きでその場からバッと立ち上がった。
さらわれた?
「だれに?なんで?」
せっかく同じ境遇の人を見つけたのだ。こんな所で諦めたくはなかった。
「エドウィーナ・ポラードだ。」
「そんな...。」
じゃあ、なんで助けに行かないのだろう。心配でたまらないはずなのに。
「あいつは、もともとは、俺の父の婚約者だったんだ。」