その後ラウロさんは「アル王子を呼んできます」と私の返事も聞かずに去っていってしまった。
待っている間、部屋の中を見回してみた。壁には立派な絵画が飾ってあり、馬の上に人が乗っている絵だった。今にも馬が飛び出してこっちにきそうなくらいに見るものを圧倒させる迫力だった。頭上には巨大なシャンデリアがあり、たくさんの宝石が使われていて、これまた豪華で高そうなものだった。床には美しい模様が描かれた絨毯がしいてあり、踏んでしまうのがもったいなかった。どこもかしこも綺麗で、 “お城” にはピッタリの部屋だった。
「そんなに珍しいのか?」
っ!!?ドタっっ!
いきなり声が降ってきて、驚いた私はその場でコケてしまった。
「痛った。」
小さく苦痛の声を漏らすと
「おいおい。ダイジョブかよ。」
笑いをこらえながら、全く心配してなさそうに問いかけられた。
「は、はい、大丈夫です。」
会った瞬間に恥を晒してしまった私は恥ずかしくて相手の顔が見れなかった。
するといきなり手をつかまれて、グイッと引っ張られた。反動でストっと立ち上がると、
「危なっかしいやつだな」
と、これまた微笑しながら言われた。
その時ふと相手の顔を見ると、相手を見つめながら言葉を失ってしまった。
綺麗な肌、少し切れ長のブルーの目、鼻筋が通っていて、顔のバランスが完璧だった。背が高く、スラッとしているけど、ちゃんと身体が締まっていると服の上からでもわかった。髪の毛はツヤツヤの金色の髪が服につきそうなくらいに伸びていた。宝石をまとわせた赤のジャケットを羽織ったこの人。そう、とてつもないイケメンが私の目の前にいた。
「おい、ホントにだいじょぶなのか?」
ずっとボーッとしていたらしい。
「大丈夫です!」
こんなイケメンは初めて見たので思わず見入ってしまった。
「えと、あなたは?」
たぶん王子なのだろうけど、一応聞くことにした。
「俺はこの国の王様、オルトン・キャトリーの息子、王子のアル・キャトリーだ。お前は誰だ?」
「私はまお、です。」
「そうか、まおか。俺のことはアルと呼んでくれてかまわない。」
「呼び捨てでいいのですか?」
王子のことを呼び捨てしていいのだろうか。少し抵抗があった。
「年も近いだろう。王子だからといって固くなる必要はない。普通に話してくれればいい。」
「そうなの?じゃあ、そうする。」
「あぁ。」
そして、アルはいきなり私に顔を寄せると私の顔をのぞき込んだ。
「えっ」
「お前はどこからきたんだ?この国のものではないな?」
確かに私はアルたちと比べると目の色や髪の色など容姿が全然違った。
「わ、わたしは...」
言葉に詰まってしまった。信じてもらえないだろう。ここが本の中なんて。私の頭がおかしいと思われるかもしれない。
「どうした?」
本当のことを言った方がいいのだろうか。
いい嘘も思いつかなかった。
「信じてもらえないと思う。」
「別にいい、とにかく話してみろ。」
そうだ、話してみれば帰り方がわかるかもしれない。なにか情報を得られるかもしれない。少しの希望が見えたので、アルに全てを話すことにした。