「ほら、ここ座れ」
「え、いや……、はい」
いやです、と言いかけたが、トオルさんがギラリと睨んできたため、言えなかった。怖いもん。
「それじゃ、失礼します……」
意外にも、幅が狭くてトオルさんとの距離が近い。少しでも離れようと、前の方に座る。
「そんな前じゃ落っこちるだろ、アホ。てめえは落ちてぇのか」
「すみません……。うわ」
「これぐらいだったら、落ちねぇよ」
グイッと引っ張られ、密着してしまう。
肌と肌が触れ合って、恥ずかしくなる。
「それじゃあ、スタートするぞ?」
「え?……きゃあああああああ」
スピードが速すぎて速すぎて、思わず叫んでしまう。怖い怖い怖い。
さっきまで、肌が触れ合ってなんだのとか言っていたけど、そんなことも飛び去ってしまった。
「ぎゃははははは」
頭に浮かぶのは、この三文字。
“助けて”
「うひゃひゃひゃひゃひゃっ」
私の様子を見て、さらに笑い出したトオルさん。鬼、悪魔。