「うん。私も朝陽と一緒にやりたいこといっぱいあるの。だから、死んじゃダメ」


『あらがってみる』ってさっき言ったじゃない。
彼の頬にポタポタと涙が零れ落ちる。


「つぐに……言ってない、こと……」

「なに? なにを言ってないの?」


そう問いかけたけれど、彼はなにも言わない。
だけど、彼の閉じた目から涙があふれ出すのが見えて、鼓動が勢いを増す。


「ダメよ。朝陽、ダメ……」


このまま逝くなんて許さない。


「つぐ……俺の手、握っててくれ」

「うん。……うん」

「諦め……ないから」

「朝陽……」


それきり、彼は意識を失ってしまった。


「朝陽、イヤよ! イヤ!」


やがて救急車が到着して、彼はストレッチャーに乗せられた。


「きみ、落ち着いて。とにかく一緒に来て」