転んでしまったときに膝にできた傷は、ジワリと痛みを脳に伝える。
でも、もっと心が痛い。


「朝陽……」


もつれる足でやっと学校にたどりつき、正面玄関から中央階段を駆け上がる。

何度も何度もつまずきながら、やっと五階まで上がり、続いて屋上に続く階段を上がり始めた。


息が苦しいのは、走ったからだけではない。
朝陽の命の灯火が消えるかもしれないというこの緊迫した状況に、心臓が壊れそうだからだ。


やがて屋上のドアに手を掛けると、一気にそれを開けた。
躊躇している時間はない。


「どこ?」


視界に朝陽の姿は入らない。


「朝陽?」


彼の名前を呼んでも、雨音しか聞こえない。
だけど……。


「ドスン」という大きな音に気がついて、給水槽の裏側に走った。
いつだったか裕一先輩と話した場所だ。