悲しい感情は、楽しい感情で封じ込めることができるはずだ。


「俺も……つぐと一緒にいられて、すごく満たされてる」


ホント、に?
涙を拭いて彼を見上げると、彼は再び口を開いた。


「でも、そんなに簡単なことじゃないんだ」


以前、『同じ目に、あわせてやる』と怒りをあらわにした彼は、私とは違う。
殺された当事者なのだから当然と言えば当然だ。


「私、諦めない。朝陽との未来があるなら、なんでもする」

「つぐ……」


もうこれ以上泣き顔を見せたくない。
朝陽の胸に額をくっつけて顔を隠すと、彼は私の背中に手を回した。


私が望んでいることは、もしかしたらメチャクチャなのかもしれない。

自分を死に追いやった相手への怒りを断ち切って、新しい人生を歩いてほしいと願っているのだから。