「つぐ……」


彼の瞳が揺らぐ。
そして苦しげな顔をした朝陽は、私に背中を向けてしまった。

泣いて、いるの?

気がつけば自分の頬にも透明の液体が伝っていた。

来年も言うからね。
あなたに「生まれてきてありがとう」と。


その日の帰りも、私たちは神社に向かった。
神社に向かうのはもう日常の一部で、特になにがあるからというわけではない。


「寒いな。つぐ、平気か?」

「うん」


本当はちょっと寒い。
コートを厚くしたものの、ここ数日の気温の急激な低下には負けてしまった。

手をこすりあわせていると、朝陽がまたマフラーを貸してくれた。


「朝陽のマフラー、温かいね」

「俺の体温をサービスしておいたからな」


彼は冗談を言ったのだろう。
でも私は、その体温を感じられることがうれしくてたまらない。

彼は生きている。