「つぐ」

「ん?」


弁当箱を片付けていると、向かいに座る朝陽が私を呼んだ。
ふと顔をあげると、彼は切なげな視線を私に向ける。


「いつも、ありがとう。つぐの弁当が俺に幸せをくれる」

「おおげさ、だよ」


だけど無性に泣きたくなるのは、他になにもできない自分がもどかしいからだ。


「私は……朝陽に出会えてよかった。朝陽に出会えなければ、私、笑っていられなかった。生まれてきてくれて、ありがとう」


死が待っているとわかっている彼に、こんなことを言うべきかどうか迷った。

もしかしたら、この世に命を授からなければ、苦しまずにすんだのかもしれない。

でも、彼はもう一度生まれてくれた。
その誕生には絶対に意味がある。

だから私が死なせない。
そして、殺させない。