「うまい」


彼が一番好きなのは唐揚げ。
醤油とにんにくを効かせた特製唐揚げは、母直伝の高瀬家の味。


「ご飯、もっと食べる?」

「おぉ」


私の弁当箱からご飯を彼に移すと、彼は私の顔をじっと見つめる。


「貴様、太らせて食おうっていう魂胆じゃあるまいな」

「誰よ、あなた」


朝陽といるとお腹の底から笑える。

でも、もう指定校推薦の枠が決まりつつあると噂で聞いた。
タイムリミットが迫っていることに焦りを隠せない。

もっともっと、彼の感情を上向きにさせたい。


いつもより一.五倍くらいはあった弁当も、すっからかんになくなった。


「はぁ、うまかった」

「ホントに? よかった」


こんなことくらいしかできないけど、朝陽が笑ってくれるなら、これからも毎日作るよ?