「あなたも、岸本さんみたいになりたいって言うの?」


激しく怒りはじめた金子さんは、私をそのまま壁に押し付けた。


「殴りたいなら、どうぞ」


証拠ができて丁度いい。
私が冷静だったからか、金子さんは手を離し「このままじゃすませない」と四人を連れて戻っていった。


「はー」


早紀は毎日、こんなことをされていたのかもしれない。
私が知っているいじめなんて、氷山の一角だ。

ポケットのスマホを取り出してボタンを押す。
ボイスレコーダーを起動させてあったのだ。


「証拠、できた」


会話がきちんと録音されていることを確認してホッとした。


素知らぬ顔をして教室に戻ると、もう授業が始まっていた。


「高瀬さん、なにしてるの。早く席につきなさい」

「はい。すみません」


金子さんがチラッと私を見たけれど、気がつかないフリをした。