「ねー」

「ま、あきらめなかったもん勝ちってやつかな。あ、勝ってないか」


ねぇ、朝陽。
私、やっぱりあきらめないよ。

私とあなたが出会った時点で、一度目の人生とは違ってる。
だからこの先だってきっと変えられる。

私はあなたを絶対に死なせないし、手を汚させない。

たとえスペアが取れなくても、逆転ストライクがあることを知ってしまったから。



ボーリング場を出ると、彼が突然海に行こうと言いだした。
電車で一時間ほどかかるけど、私はそれを承諾した。

もっと彼との楽しい思い出を作りたい。
彼が苦しみの闇に飲まれてしまわないように。


「寒ーい」


十一月のこの時期に、海に遊びに来る人なんていない。
夏はにぎわう駅も、私たちしかいなかった。