「朝陽」


朝陽がいつものように来てくれるのが見えて、自分から駆け寄った。


「おぉ、来てたか」

「うん。今日はお弁当作ってこられなかったの」

「いいよ。久々に購買行くか。いつも作ってもらってるから、おごってやる」


購買で焼きそばパンを買うのは初めてだった。


「ねぇ、たまには、コロッケパンとか食べないの?」

「そんなの邪道だろ」

「えー、焼そばって王道なの?」


悲しい運命を背負っているくせに、彼の笑顔は輝いている。
とても数ヶ月後に死が迫っている人の顔には思えない。


いつものように視聴覚室の端の席に座ると、『つぐみちゃんと一緒にいるときは、楽しかったんだと思う』という野上先生の言葉が頭の中でリフレインした。