夕暮れの空をよく、燃えているような夕日、という。
まるで空と炎が同化しているかのようにオレンジの光に照らされて、私と明は茫然と燃えていく我が家を見ていた。
仲良く並んだ2つの家は火の海と化していた。
「母さん、母さんはどこ?消防士さん、母さんは?白沢日和は?!」
私達の周りは大勢の野次馬と消火に動く消防士に囲まれていた。そこに明のお母さんも、私のお母さんも、家にいたはずの火憐お姉ちゃんの姿もなかった。
「君は、明くんだね?そこの女の子は、灯ちゃん?」
「そう!消防士さん、お母さんは?火憐ねーちゃんは?灯の母さんは?」
明は必死だった。
私は突然のことに何が起こっているのかわからず、明と炎を見つめていることしかできなかった。
消防士さんは、ため息をついて私たちに告げた。
「ごめんね、三人ともまだ…中にいるはずなんだ。」
この、火の海の中に、まだ。
それがどういう意味かなんて、小学5年の頭でも理解できた。
「母さん!母さん!まだ中にいるなら助けなきゃ!」
明は炎の中に突っ込もうとした。
「明くん、危ない!」
すかさず消防士さんに抱え上げられた明は、叫びながら泣いていた。
潤んで輝く瞳に炎が写っていた。
その炎は明の心を燃やし、その灰を涙が流した。