私、カナメは只今学校から帰る途中、見知らぬ男の人にキスされました。

「………っ!」
「いった!!いてっ!!!おま、、それ、いかんやろ… 」

男の急所をあまり肉がついていない骨ばった膝で蹴りあげた。
ついでに弁慶の泣き所をつま先で蹴った。
男は涙目で、お腹を抑えて、のたうち回っている。
急に立ち上がって、私の目を真っ直ぐ見てきた。
しかし、足はガクガクだ。産まれたての小鹿並みにガクガクだ。大事なことだからもう1度言っておく。顔はバッチリ決め顔で足はガクガクなのだ。

「コホン…君、明日の夕方、気をつけらなよ。周りをよく見てね。」

そう真剣な顔で、プルプルしながら、不可解なことを言い残して
「いてて…ばりいてぇな…これ…」
っといいながらゆっくり去って行った。

意味がわからない私はその場を動けなかった。
何より何者なのか、それだけが私の頭の中を占領していた。

それからというものその男ばかり頭に浮かんできて、夕食もお代わりする程の食欲が湧かなかった。
「明日の夕方…」
何があるんだろう…
って、何信じてんの!?
信用しちゃいけない。知らない人のいうことなんか信じちゃいけない。
でも、言ってることが本当だったら…明日…
「あーもう寝よ!」
頭まで布団をかぶって寝ようとした。でも、目をつぶると唇に感覚が戻ってきて、あの男の顔が思い浮かんできて、どうしようもなくなった。
どうしても寝付けなくて長年愛されているモンスターをゲットするゲームを強化してたらいつの間にか眠っていたようで、
「んっ…〜っ はぁ…」寝るのが遅くなった訳かすっごい眠い。欠伸が止まらない。
「あ、ゲー…む……あああ!セーブしたっけ!四天王倒したのに!!」
そういう機械は開きっぱなしだと充電が無くなるもので、気づいたら眠っていたカナメは朝からテンション駄々落ち。

朝からずっと机に突っ伏している。
「カナメ?大丈夫?体調でも悪いの?」
「んー…」
心配して声をかけてくれた友達にもついこの返答。少し申し訳なくなる。
授業受ける気なんてさらさらない。
気づいたら放課後になっていて、いつもの帰宅路を辿っていった。すると、あまーいいい香りが漂ってきて、なんとも言えないいい香りなもので、ついフラ〜とその匂いを辿っていった。
辿っていく度に強くなる匂い。目の前に曲がり角が見えてきた。この曲がり角を曲がったら目的地がわかるって直感でわかった。すごく強い匂いに頭がフラフラしてきた。吐き気を催す程の甘い香り。出処はここらしく辺りを見わたすが何も無い。
ーしまった…眩暈が…倒れる…っ
「おっとあぶない」
「うっ……」
そのまま意識の底へ堕ちていった。