もっと知りたい、もっと大好き。



月曜日の仕事はよく憂鬱で嫌だって聞くけれど、かく言う私もそうだったけれど、今では司さんに会えるから大好き。

ほうきを手に、朝のオフィスをくるくる回る。
最近では良い天気が続いて気温も上昇。
清々しい鳥の鳴き声が聞こえた。

「ふふっ」

司さん、好きな気持ちは変わらないって言ったけれど。

キスで変わる大好きの温度。

初めての余韻は一晩寝ても覚めません。
いつか熱にうなされて夢で見たキスを思い出したから、なおさら。

好き、の材料を一つずつ計量して。
ほどよい時間で捏ねて寝かせて……。
美味しい初恋の焼き上がりっ。

なんちゃって!

やだもう私ったら、パンじゃないんだか……ら……。


「おはよー?」


つ、つ、司さん!
見られた!笑われてる!恥ずかしい!

「確かに『忘れられない笑顔』かもね」
「……っ」

ガッツリ夢の世界でニヤけてました。
つま先まで上気した私の頭をふわりと撫でて、眉を上げ覗き込む悪戯な目つきの彼。

「なに考えてたの?」
「ひっ、秘密です!」
「ふーん?じゃこれどうしよっかな……」
「あっ!」

私が好きなキャラメルラテ!

酷いです、意地悪です。
下唇を噛んだまま膨らませた頬を、司さんの左手がすかさず捕まえてむにむに引っ張る。

「ほら、言ってごらん」
「…………黙秘します」
「あっそ。じゃいいや、大介にでもやるか」
「えっ!そんなぁ」
「……冗談。あんまり会社で俺のこと考える
なよ」
「はい、気をつけます」
「ククッ。正直なヤツ」
「……あ」

ハメられた。
というか、お見通し?

朝から変な汗かいちゃった。
つむじの上に乗せられたキャラメルラテも冷や汗をかいていた。


「おや、宮内くんに田代さん」

おはようとオフィスのドアを開けたのはニコニコと楽しそうに微笑む社長。

「「おはようございます」」

「やっと恋人になったのかな?」
「えっ!」

そ、そういえば私が司さんを意識する前から社長はそんなこと仰ってた。

「年寄りの楽しみなんだから、ちゃんと報告してほしいなぁ。宮内くん」
「……いやぁ」
「前に『なかなか手強い』って言っていたからね、教えてくれないと気になって満足に退職もできないよ」
「社長に退職されたくなかったもので」
「ははは。もうゆっくりしたくてね。そろそろ若い世代に譲るよ」
「名残惜しいです」
「ありがとう。じゃ、二人とも今日もよろしくね」
「「はい」」


……なかなか手強い?
再び二人きりになったオフィスで、司さんをじっと見つめ上げる。

「司さん」
「さて。仕事しよう」
「手強いってなんのことですか?」
「あー忙しい忙しい」
「ちょ、司さんっ!……もう」


はぐらかして逃げる彼に幸せの溜め息を溢す。
心地好い朝の時間に、悪戯な彼の優しい笑顔が溢れた。