宅配物を発掘してオフィスへ戻ると、佐々木先輩が慌てて駆け寄ってきた。

「司!佐川先輩が戻ってきた」
「……なんで?」

「なんでって、酷いなぁ。宮内」

「……お久し振りです」

佐川先輩……?
総務部の先輩達がその人の周りでキャーキャーと騒いでいる。
理子先輩も、いつ見てもイケメン!と興奮しているし。
私以外の社員はほとんど知っているようだ。

先輩、と呼ばれているなら会社の人?

隣にいる司さんを見上げると、和気あいあいと盛り上がる佐川先輩という人を珍しく表情もなく見据えていた。
いつもは誰にでも笑顔なのに、なんだか変な感じ。
大丈夫かな……?

「司さん、どなたですか?」
「あぁ、昔……」

背伸びをして静かに聞こうとしたら、司さんも気づいて屈んでくれる。
だからこそ、間近で見てしまった。

「諸君、来週から佐川専務と呼びたまえ」

顔色の変わった司さんを。



専務?

佐川……、って名字は確か社長もそうだ!
まさか社長の御家族!?

でもそんなことより……。

「あの、大丈夫ですか?顔色悪いです」
「え?……うん」

司さんの様子がおかしい。

「本当に……?」

苦笑いする彼を心配になり見つめていると、突然影が落ちてくる。

「ん?」

「君っ!」
「……ひっ!?」

いつの間に目の前に現れたのか、佐川専務が私をキラキラした笑顔で見下ろしていて、そっと両手を掬われた。

「あ、あ、あのっ!?」
「驚いたな。運命かも……」
「なにを……?」

見かけよりも強く握られた手に、懸念して後ずさる。
眉を寄せて俯いた私の脳内はパニックで真っ白だった。



「君に会いたかったんだ!」



…………はい?