~田代美琴と黒い影~



司さんの言葉が嬉しくて、やっぱり優しいなって、大好きだなって思った。

ぎゅっとするよりも、もっと……。

私にもわかるくらい、そんな雰囲気になった時。
バタバタと走る足音が近づいてきて、司さんがチッと舌打ちをした。


「今度の日曜ウチにおいで」

ぱちぱちと目をしばたたくと、私を立たせ頭を撫でる。
それから優雅に微笑み、私の髪を掻き上げて耳元にキスを落とした。
ニッコリというよりもニヤリとした微笑みだったのは見間違い……?

そ、それよりも今……。

平然と散らばったダンボール箱を拾い上げる司さんに茫然としていると、倉庫の扉が開く。

「理子先輩……」
「すみません、ありましたか?……って、なんでこんな散乱してんの?」
「あ……、私の置き場が悪くて倒しちゃって」
「もうっ、本当にドジなんだから」
「はい……」
「ボーッとしすぎ!」
「はい……」

気の抜けた返事をしながら熱くなる耳を押さえて、ポーッと頬を火照らせる。
みみ、耳、き、キ、キス……?
胸の奥から高鳴った心臓が逃げないようにゴクンと飲んだ。
瞳孔が開きまくっている気がする。

「ちょっと美琴?固まってないで、さっさと片付け……」
「田代だって驚いたんだろ。倉庫も狭すぎるんだよ。白坂、こっち手伝ってくれる?」
「もうっ、宮内部長優しすぎー!」
「そりゃどーも」


まるで爽やかに見える宮内部長。


「驚いたです……」

理子先輩、今の宮内部長は意地悪です。
その笑顔の裏に、黒い何かを感じます。