司さんの恋人になって、もう一ヶ月がたつ。

恋人だということは、やっぱり会社では公にできないから。
相談したわけでもないけれど、お互いに黙っていた。



そんな恋人として、何か進展したのかといえば全く。
それ以前に宮内部長は凄く忙しそう。
毎日残業、土曜日は休日出勤、日曜日は寝てよーび。
包丁がないって言っていたほどだから、食生活が心配になりつつもどこまで踏み込んで良いのかわからず。


唯一、二人きりの時間が楽しみだった。

朝のオフィスで一番に「おはよう」が言える喜び。
なるべくバランス良く組み合わせた惣菜パンと、疲れた時に食べたいような菓子パンを考えて。
渡した時の嬉しそうな笑顔に自信をもらう。
そして司さんが買ってきてくれるコンビニスイーツは、私の好みとか新商品を選んでくれていて。
微笑み合うたびに、大好きが伝わった。

変わらないけれど確実に変わった関係。



「仕事落ち着いたらどっか行こーな」
「はいっ」
「最近ずっと忙しくてごめんな」
「いえっ、仕事大変なんですから!私のことなんて気にしないで……」

そう思ってくれるだけでも充分だもの。
ニコニコしていると、意地悪な目つきで覗き込まれてドキッとする。
司さんの両手が優しく頬を包み、驚いてぎゅっと目を瞑り俯いた。

「浮気しないでね?」
「なっ、もうっ!」
「ははっ、真っ赤だぞー」


仕事をする彼と掃除をする私。
二人きりの朝の秘密。


今のままでいいかな、って。
幸せだなって、思う。