「田代さんは営業ね」
「はい」

10時になると事務員はお茶汲みをする習慣がある。
私は営業部と総務部の人達へ、白坂先輩は設計部の人達へお茶やコーヒーを運ぶ。

耳に入ってきた話だと、白坂先輩は宮内部長を狙っているのだそう。

私がお茶を淹れている間、先輩は念入りのメイクにリップグロスを塗り直して髪を整える。
ツケマツゲ、私も挑戦してみたんだけど散々だった。
髪もどうやったら上手に巻けるのかなぁ。
綺麗だなぁ。

「ちょっと、なに見てんのよ」
「あっ、すみませんっ。淹れ終わりました」
「行くわよ」
「はいっ」

綺麗だけど、目力が、怖いよぅ。



「お疲れ様です」
「あぁ、どうも」

営業部はほとんど外回り。
デスクにいないので、たまにいる平出部長に出すくらい。
無愛想で口数も少ないのに営業部の部長なのは、社長と古い友達だからとか。
女好きらしくて言い寄られたとか、営業部の既婚者とも関係を持っているだとか。

耳を塞いでも聞こえてきてしまう、嘘か真か総務部による噂話。
仕事よりも私の頭の中には余計な情報ばかり蓄積されていく。