部長と白坂先輩が二人でいるところを想像すると、モヤモヤした何かが胸の中でぐるぐると渦巻いて苦しい。

「なぁ司、白坂さんになんかしてやったの?」
「は?なにも?」
「ここ一ヶ月くらいアピール凄くね?陥れらんないように気をつけろよ」
「はぁ?」
「朝目覚めたら食われちゃってましたー!とかヤメテネ」
「お前な、そういうことを……」
「田代さんもガッカリだよねー?」
「えっ?食べる?」
「だぁから、…………」
「おい大介っ」

悶々と葛藤していると突然話を振られて、戸惑う私に佐々木先輩は耳打ちをする。
慌てて立ち上がった部長を前に聞いた、その内容に顔から火が吹き出た。

「田代さん赤くなってる!かわいー!」
「や、やめっ」

肩に回された腕に力が入り真っ赤になった頬を指で差される。
恥ずかしくて涙が出そう。

「からかわないでくださいっ」
「本気だよ~!さっきのもからかってないし、ちゃんと考えといてよ~!」

そう言ってさらに力の入る腕に、いたたまれなくなった。
佐々木先輩は本当に気さくで、会社で話せる人ができて嬉しい。
でも、男の人とくっつくなんて経験のない私は気が引けて、ビクビクしながら失礼のないように身を捩る。
意識しすぎなのだろうけれど、恋愛偏差値はゼロだしそれ以前に対人偏差値も低い私。
きゅっと両手を握り締め、スプーンに逆さまに写る不細工な自分を見た。

「……大介、田代が怯えてる」
「そんなことないって!俺達仲良しだよねっ?」
「えっ。そう言ってもらえると嬉しいです、けど……」
「ほらみろっ司!」
「あっそ」

試すような目つきで見下ろす部長は、怒っているみたいでちょっと怖い。
困ったら言えって、言ってくれたけれど。
この状況で言えないし、本来は自分で上手く話せるようにならないといけないし。
なんて切り返すのがベストなのか……、うわーん勉強不足。


「ところで。田代はなんでスプーン持って突っ立ってんの?」
「ま、まだ混ぜてなくてっ」
「うん。ありがと」

わかってた、みたいな顔してる。

肩を撫で下ろすと優しく笑ってくれて、そう思っていたら気のせいか意地悪そうに口角を上げていた。